Crane Brinton, 革命の解剖 The Anatomy of Revolution

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Crane Brinton 革命の解剖 The Anatomy of Revolution

June 26, 2023 ;

Crane Brinton; 革命の解剖。The Anatomy of Revolution 1938年。岩波現代叢書、1952年;

イギリスのピューリタン革命、アメリカ革命(独立戦争)、フランス革命、ロシア革命の4つの革命の科学的分析を試みるものである。1章には、その方法論が比較的詳細に記され、これらの革命過程に共通の「定律」を発見することが本書の課題であると述べられている。定律がどのような言葉の訳語なのかは、本書からは不明である。研究の要がある。定律の発見には、思考形式によって現実を客観的にとらえること、しかも、その思考形式の固定化を警戒する必要があることが指摘されている。思考形式の原語は不明である。あるいはカテゴリーか。概念的把握の必要性と、その概念の固定化への警戒の必要性を指摘する点において、私見に近いと感じる。すなわち、事物の運動を前提としたその概念的把握こそが必要なのである。

革命の過程については、1. 政府の財政的窮乏と人々の「無能」な政府への不満の激化及び知識人の離反、2. 穏和派革命家による権力の掌握、3. 革命前の政権が直面した財政、政治軍事機構、戦争等の困難をそのまま引き継いだ穏和派革命家の「無能」、4. より急進的な革命家による煽動と権力の奪取、5. 革命的熱狂(禁欲主義と狂信をも伴う)の衰退とテルミドールの反動の各段階が共通して継起したことが論じられている。

以上がごく簡単な要約であるが、内容が豊富であり、要約は難しい。以下、印象に残った点を記す。

40: 経済的窮乏はそれ自体では革命を導かない。むしろ4つの革命はいずれも経済的繁栄期に生じた。経済的不満が存在し、政治がその原因であるとの「気持ち」の充満が革命の発端となる。

42: 革命の発端に関する要約: その1. 革命前の社会の全体的な繁栄。その2. 政府は慢性的に財政的窮乏状態にあること。その3. 若干の集団が、政府の政策が彼らの経済的利益に反していると考えていること。その4. ロシアを除き、階級の利益のための政府の転覆は、宣伝の内容となってはいなかったこと。

44: 上記その3について、政府が「無能」と感じられること。

45-46: 上記その2に関しては、それが所有形態すなわち租税源泉と関連していることが論じられていないと思われる。

46: 共通して、革命前に「改革」が試みられていること。

57-58: 知識人の離反。自然法則、神の意志等による必然的な変革を主張するイデオロギーの出現。

60: 階級(ただし、著者においてはマルクス主義的な含意なくこの言葉が用いられていることに注意)の対立。

64: 支配階級が分裂し、一部が革命的知識人に加わること。

68: 支配階級の経済的不安定。

70: 階級的憎悪の増大。

73: 「機会均等」、すなわちエリートへの上昇可能性の低下、パレートのいう「エリートの循環」の停止。これは重要な指摘である。

77: 経済的な有力者が政治権力と社会的栄誉を得られないこと。

78: 以上の要約。革命前の社会の特徴。97: 革命の第1段階の共通性。反税闘争。

102: 陰謀か自然発生的な反抗か。著者の答えは両者である。103: 革命を成就した革命家のご都合主義的自然発生論を批判する。著者はプレッシャーグループの理論を援用しつつ、急進的な諸集団による指導の下での大衆の自然発生的憤激と行動が革命を導くとの結論を示す。ただし、一つの中心があるわけではない。

109: 旧体制が実力による弾圧をなし得なかったこと。支配階級の無能・退廃を原因として指摘するが、むしろ、財政的な困難とイデオロギー的な守勢により弾圧装置を動員できない状況にあることが原因ではなかろうか。すなわち、弾圧には限界があるのである。

114: 実力における優越がなければ革命は成就しない。

121: 穏和派革命家の存在。

122-125: 革命家の分析。無名な人々。ジャコバン・クラブ構成員の分析が示されている。中流、労働者、農民のそれぞれの割合は、社会の横断面(クロスセクションであろう)を示していること。それは今日のロータリークラブのようなものであること。127: アメリカの場合。当初貴族的、後に「普通人」の力。129: 革命派の「体幹部」は決して社会の最下層を代表するものではないこと。

132: 指導者の階級的出自の目録。135: ルンペンは指導者になり得ない。

150: 革命家の人物像の目録。少なくとも下士官たちは普通人である。上層階級出身の革命家たちは、その階級の中でうまく振る舞うことができなかった人々であること。

160: まず穏和派が名目的にせよ政権を握り、急進派・極端派と対立する。そして穏和派から極端派への権力の移動が起きる。175: その過程における「二重主権」(二重権力と一般的に称される事態をいうものであろう)。穏和派は、必然的に不利であること。財政的負債、旧来の政治軍事機構、戦争状態等を引き継いだ上で責任ある政府として振る舞うことは困難である。180: 穏和派はなぜ敗北するか。言論の自由等のイデオロギーによって断固たる弾圧を妨げられること。また、大衆の支持を得る上で革命的な姿勢を示すことが必要であること、旧支配層への対抗上極端派の支持が必要であることから、その成長を妨げ得ないこと。

186: その結果、穏和派は、保守派を決定的に敵に回す一方、極端派の勢力を強める政策を採らざるを得ないこと。イギリスでは根絶法、フランスでは僧職世俗化法、ロシアでは軍隊の「民主化」措置としての命令第1号がこのようなものとして挙げられる。

188: 穏和派による戦争指導の失敗。強力な中央集権的政府がなく、個人の自由が尊重される。常識的な実際家の穏和派は対処できない。193: 極端派による権力の掌握。二重主権の下でのクーデター。革命前の、弾圧下にあった革命組織の強力な規律の利用。198: 極端派は大多数の人民を投票から心理的・物理的に遠ざける。200: 少数の、規律ある狂信的集団の力の強さ。203: ナチズムと同様の指導者原理の存在。206: 目的のためには限界なく手段を正当化する態度。テロルの肯定。

213: 十月革命の周到な準備。ゼネラル・ストライキのような無意味なことを行わず、印刷出版、郵便、電信、銀行、官庁等の接収を行った。

220: イギリス革命における共産主義思想。

223: 極端派の独裁。その行政の拙劣さ。234: 革命後の改名熱について。242: 宗教的狂熱。その経済的動機の一つとしての敵財産の没収。248: 極端派の禁欲主義と相互監視。恐怖政治。260: 恐怖政治の要約。その1. 暴力に訴える習性。その2. 対外戦争・内乱の重圧。その3. 中央集権的機構の未熟さ。その4. 経済的危機。その5. 階級間対立の激化。その6. 指導者の非妥協性。その7. 宗教的狂信(フランス革命の理性神のような)。恐怖政治ー>戦争ー>恐怖政治の循環。

266: テルミドールの反動の普遍性。熱病の「危期」からの回復期。革命によって権力を掌握した者たちがこれを決定的に確立する過程。269: ロシアにおけるテルミドールはNEP、1921年に始まった。その後の危期と見えるものは、反動期のエピソードであり、トロツキーらの粛清は、反動の一環としてのスケープゴートの弾圧である。272: 穏和派・保守派の限定的復権。一方での、悔い改めない者の弾圧。宗教の復活。享楽追求の肯定。ロシアにおけるピョートル、エカテリーナらの賛美。歴史の書き換え。

300: 革命の成果。円滑で経済社会生活に適合した政府機構。ロシアにおける能率的な政府機構による経済的な達成。303: 没収、強制売却による財産の移転。新たな支配階級の出現。ロシアにおける消費において特権的な官僚たちは、新たな支配階級を構成している。イデオロギー、自由・平等・博愛等の影響。

332: 再び方法について。指導者たちの言葉を捨象して事態を観察することの重要性を指摘する。私見に一致する。

9章: 全体の簡潔な要約となっており、この部分を参照すれば、他は大体推測可能である。325: ツキディデスの引用。該当箇所不明。「いったん動乱が都市に起こると、この動乱に追従した人々は革命精神を次第に高めるようになり…」(革命的熱狂の描写)。

ハンナ・アーレントの『革命について』(別ノート参照)は、この書の影響を相当受けているように感じられる。革命が政治過程への参加の拡大にとどまるべきこと、社会経済的課題を革命によって一挙に解決することを期待してはならないこと、これらの主張はそのとおりではあるが、実際の革命過程は、大衆を、とりわけ軍を味方につけて動員するために、社会経済的な幻想を振り撒きつつ進行する。そして、そのことこそが本書によって明らかにされた革命の過程を、ほとんど止めようもなく、始動させる。

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