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田中英道 光は東方より ―西洋美術に与えた中国・日本の影響
田中英道
光は東方より
中国や日本の絵画の西欧絵画への影響を論じるものである。次のような点が注目される。
ジョットの絵画に中国絵画の影響があること、モンゴルのパスパ文字が衣類の装飾として使用されていること。
マネ、モネ、セザンヌにおける浮世絵の影響。
フェルメールにおける東洋の、特に中国陶器等の取扱い。
西欧画の中に描かれたパスパ文字は、画期的発見である。
また、ルネッサンス初期の絵画における風景のとらえ方、人と空間のとらえ方(地に足が着いた多数の人物像)、人の動作のとらえ方(瞬間的・偶然的な姿勢と視線)が中国絵画に影響を受けているという主張も説得力がある。
多数のモンゴル人像が現れることなどを考慮すると、当時、東洋は理想的帝国として考えられていたのであろう。プレスタージョン伝説も同根である。イスラムに対する同盟の必要性という政治的・軍事的理由もその根底にあるものと思われる。
あとがきで、著者は、日本の研究者が実証をおろそかにし、求めに応じて、エッセイ風の短文を書くことで満足している現状を批判する。まさにそのとおりである。それにしても、田中の文章はそれほどうまくないということに初めて気付いた。日本語の表現において、鋭いが、乱れがある。どうしてであろう。
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