カール・ポパー 知と心身問題
July 19, 2019;
ポパー、 Karl Popper; Knowledge and the Body-Mind Problem;
身体が属する第1世界 World 1、個々の意識が属する第2世界 World 2、客観的知識や人の生産物が属する第3世界 World 3が存在し、それらの相互作用及び各世界が進化論的に発展することを説く。
獲得された習慣は、これに適応した遺伝子的変異を伴う人に有利に働き、自然淘汰によってこの遺伝子的変異が固定する。このようにして獲得形質が遺伝的形質に移行する。言語能力もこのようにして遺伝的に固定された。この理論はすばらしい。チョムスキーの生得的言語能力に関する理論が初めて合理的なものとして理解できたとの感想を抱く。
今日の言語は、その発生から、表現 expression、コミュニケーション、描写 description、論議 argumentの4段階、大きく分ければ、描写及び論議とそれ以外の2段階を経て発展したものと考えることができる。描写及び論議の段階に至った言語は、各種の状況を集団が共通して認識し、これに柔軟に plasticに対応することを可能にして、生存に有利に働いた。この言語の発展理論もすばらしい。
人の個々の意識、すなわち第2世界は、第3世界との相互作用において発展し、活動する。これによって、第2世界及び第3世界が進化し、発展する。
なお、第3世界は、私見による「観念体」(人の認識内容が言語等の記号によって外部的に表現され、それ自体が人の認識の対象となるもの、すなわち「対象化」されたもの。文字等の記号に依存するが、そのような物理的存在であることを超えて、間主観的に「意味」として実在するもの)の世界であるにとどまらず、人のそれ以外の生産物をも含むものであり、「観念体」の世界よりも明らかに広い。また、客観的知識なるものの定義は明示されておらず、記号表現に依存しつつ、間主観的に存在する観念的実在であることが明確に把握されていない。これによって叙述が混乱している印象もある。
以上書き進めるうちに、パースが人の認識の発展を記号過程として捉えたことの意味がおぼろげながら浮かび上がってくるように感じられた。ポパーは明言しないが、あるいはパースから大きな影響を受けているのかも知れない。認識の社会性、すなわち人の認識が多数の者の活動の共同によって発展することを強調するのは、両者に共通する重要な点である。(パースのポパーに与えた影響についてどこかで読んだ気がするが、差し当たり見つけることができない。)