飯塚浩二 東洋史と西洋史とのあいだ
..Date: Sun Aug 05 18:41:18 2001;
飯塚浩二;
東洋史と西洋史とのあいだ; 1963年初版
歴史をみる上で知らず知らずのうちにそれにとらわれている先入観(特に欧米の学者の見解に無批判に追従することによるもの)を指摘し、歴史を先入観なくみることの重要性を説く。その文体の独特さと相まって、極めておもしろい。
ヨーロッパの中世なるものが、イスラム文化の優位とその継承の時期であったこと、「暗黒の中世」がヨーロッパの暗黒にほかならず、暗黒を指摘する歴史家において、イスラム世界の隆盛がすっぽり視野から抜け落ちていること、シチリアにおけるイスラムの支配と、その隆盛、それを引き継いだノルマンの支配の開明性について述べる。
また、モンゴルの大帝国の興隆が、彼らの残虐性といった原因に解消されるべきではなく、イスラム隊商、すなわち当時の商業資本との結びつき、これとの共生関係から解明されるべきことを説く。モンゴルがむしろステップの民であり、砂漠の民ではないこと、砂漠はいわば陸における海であり、これを交通路として利用できる技術の意義が評価されなければならないことなど、その指摘は、一々おもしろく、自分の頭で考えた、真の功績である。
おそらく、田中英道の「光は東方から」もこの書の影響を被っているのであろう。
宮崎市定の引用は全くないが、これはどうしたことであろう。
著者は人文地理学者であり、1934年ころに、おそらくフランスに留学し、その際に西アジア、アフリカ等を旅行しているものと推測される。この点においても、宮崎市定との類似性がある。著者が評価するのは、人文地理学のヴィダル・ドゥ・ブラーシュであるという。歴史家では、アンリ・ピレンヌ(マホメットとシャルマイーニュ)が挙げられている。
飯塚浩二の他の著書としては、アジアの中の日本・中央公論社、東洋への視角と西洋への視角・岩波書店、ブラーシュ・人文地理学原理(岩波文庫、翻訳)、世界史における東洋社会・毎日選書(1948)等がある。