山本義隆『磁力と重力の発見』Yoshitaka Yamamoto, Discovery of Magnetic Force and Gravity

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山本義隆『磁力と重力の発見』

..Date: 2009.08.10;山本義隆;磁力と重力の発見

すばらしい。古代からルネッサンスに至る,実験による検証を欠いた,磁力に関する迷信的な理解、例えば,ニンニクを塗ると磁力が失われる。ダイヤモンドは磁力を遮るなどが論じられる。ルネッサンスも,その初期は,アリストテレス・スコラ学的な幼稚な理解を超えることはできなかった。しかし,大航海時代を迎え,羅針盤が利用されるとともに,偏角や伏角が発見され,(この間の事情は,後に更に深く研究され,16世紀文化革命としてまとめられることになる。)遂にイギリスのギルバートにより地球磁性体論が提唱されるに至る(なお,著者は,その先行者を正当に評価する必要性を指摘する。)。ギルバートの理論は,端的に遠隔作用としての磁力を認めるものであり,天体の運行もその類推により把握できることを示唆するものであった。

一方,ケプラーは,チコ・ブラーエの長年にわたる正確な観測結果から,楕円軌道,面積速度の一定性という法則を見いだした。ここに現象の関数的関連性の発見という近代物理学の方法が明確な形をとって現れた。そして,ケプラーは,ギルバートの影響を受け,天体の間に磁力が働いている可能性を指摘した。ただし,ケプラーにおいては,慣性の法則が正しく理解されず,物体は常に静止する傾向をもつという「静止慣性」であると考えられたため,ニュートンに先んじて重力を発見するには至らなかった。

他方,ガリレオは,延長を持つ物体(「有形物」ということができるか)の近接作用のみを認める機械論的立場に立っていたため,重力について数学的な法則性を発見することはできたが,万有引力の発見には遂に至らなかった。これは,デカルトも同様であり,機械論的立場は,遠隔作用を魔術的なものとして排斥したのである。その顕著な例は,潮汐に関するガリレオの説明であり,ガリレオは,地球の自転と公転の方向が一致する場合と一致しない場合において地表の回転速度に差が生じ,海水がそれに追いつけないために高低が生じるという理論を提唱し,これを地球自転の証左と考えたという。当時においても,潮汐を月の影響と考える立場があり,しかも,潮汐が一日に二度繰り返されるという事実を説明できないにもかかわらず,このような説が唱えられたという。

デカルトもまた,磁力に関し,施条粒子なる仮想的有体物粒子を仮定し,それが流出・環流することによって磁力が生じるという機械論的な説明を提唱し,遠隔作用を魔術的なものとして排斥する立場からは,有力な説明として受け入れられていたという(ただし,デカルトは,慣性の法則を運動慣性として正しく理解した)。

フランシス・ベーコンも機械論的立場に立ったが,一方で実験による検証を提唱して,万有引力の発見に道を開いた。フックは,ケプラーの法則を正しく説明する方法を考え,運動慣性と引力によって天体の運動を説明すべきであるとの考えに至ったが,その数学的定式化をニュートンにゆだね,遂にニュートンにより万有引力が発見された。なお,ニュートンは,磁力については,デカルト的理解にとらわれており,その証左として,磁力が逆二乗法則により減衰しないことを挙げたという。しかし,磁力についても逆二乗法則が妥当することは後に発見された。

後書きに,遠隔力の発見に問題意識を持った過程と研究方法が述べられている。驚くことに,コンピュータは利用しているが(windows 3.1 + WZ editor!),インターネットは利用していないとのことである。国会図書館と都立中央図書館,神田古書店が主な情報源であり,外国に行ったこともないという。おそるべき能力である。英訳して世界に売り出せば,必ず売れるであろう。

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